相手に合わせない

人との付き合いにおいて、“相手に合わせる”ということは非常に大切なことだと思いますし、又、社交ダンスを踊る上でも同じことが言えるでしょう。

しかし、それだけではなく、相手に合わせない、つまり自分を変えないという部分もあることを忘れてはいけないと思いますので、そのことに関して考えてみます。

 

昨年ブームになった坂本龍馬の有名な逸話です。

龍馬が勝海舟に、西郷隆盛とはどういう男かと説明した時に、「西郷はお寺の釣鐘のような男である。大きく打てば大きく響き,小さく打てば小さく響く」と言ったそうです。

それを聞いて勝は、言った方も言われた方も大したものだと感心したそうです。

これは、西郷という男は、器が大きいからどんな相手にも話を合わせられる、大物と話しても合わせられるし、小物と話しても合わせられる、というようなことを言っているのでしょうか。

これは素晴らしいことです。

しかし、ここでもう1つ重要なのは、なぜ釣鐘という言葉を使ったのかということです。

釣鐘自身は全く変わらないものなのに、音は打つ相手によって違って響くだけなのです。

つまり、器が大きいということはどういうことかというと、自分を変えずに相手に合わせなくても、自然に相手に合ってしまうよ、ということを言っているのではないでしょうか。

 

さて、社交ダンスに話が変わります。

自分より断然上手いと思う人と踊る時は、相手に合わせることを考えて踊った方が良いと思います。

それが上達の近道と言えるでしょう。

しかし、自分とそれほど変わらないか、或は自分より下と思える人と踊る時に、多くの男性は手加減して相手に合わせて踊ってあげよう、つまり自分が踊らないで相手をリードしようと考え、多くの女性も相手に合わせて踊ってあげようと考えていると思います。

もちろん、ステップの大きさをある程度相手に合わせることは必要です。

しかし、本当に上手い人は、重要な身体の使い方は相手に合わせないで自分もしっかりと踊っているのです。

その方が、自分も崩れないし、相手も上手く踊れるのです。

相手に合わせて小手先の踊りとならないように、自分のやるべきことはしっかりと意識して踊るようにしましょう。