単純がいいのですが

 私は以前、レッスンの時にたった一言の単純な言葉で生徒さんを上手くさせられたらいいなあ、それこそが究極の教え方なのではないかと考えました。    
たぶん、教わる皆さんも同じように考えていると思います。
しかし最近は、それは夢の話で、現実には無理なのではないか、と思うようになっています。
なぜならば、身体の微妙な動きを伝えられる言葉というものがなかなか無いのと、同じ言葉でも人によって感じ方がぜんぜん違う場合があるからです。
日常生活での常識的な話をしている場合には、自分の意思を他人に伝えられる言葉はある程度あると思います。
しかし、私たちが社交ダンス教師として皆さんに技術を教える時に、いかに言葉の数が足りないか、と思い知らされるのです。
例えば、ワルツのソフトでダイナミックな動きを伝えようとしても、とても一言二言でその身体の動作を正確に伝える言葉は見つかりません。
ですから、私には、よくあるワンポイントレッスンというものはできないのです。
そこで、それを伝える為に「ああだ・・・こうだ・・・」と長い説明をすることになります。
私などは生徒さん達に「説明が長すぎる」「話が難しい」などと思われているのでしょうね。

 相対性理論で有名なアルバート・アインシュタインは「なにごとも、できるだけ単純であるほうがいいが、単純化はよくない」と言っています。
トッププロの踊りや、私が皆さんに求める最終的なイメージは、とてもシンプルで単純なものなのです。
上手い人ほど自然な動きをしているのです。
アインシュタインの言葉を社交ダンスに置き換えると、「社交ダンスはできるだけ単純に踊った方がいいが、それを教えるのには単純化はよくない」ということになりますか。