仙骨から考える歩き方

身体を横から見ると仙骨は小さく見えますが、前後から見ると意外にもかなり大きいということが解ります。
ですから、腰を左の腸骨、仙骨、右の腸骨と3等分して考えてください。
この3つが固まっていると、左足を出すと腰全体が右に回り、右足を出すと腰全体が左へ回り、その結果、仙骨が不安定になり、背骨もふらついてしまいます。
或は、体重を一歩一歩にしっかり乗せるように歩くということは、片足に片方の腸骨と仙骨を乗せることになるので、足ごたえはあるのですが、ステップする度に仙骨が左右に揺れて不安定となり、その上に乗っている上体が不安定になります。

そこで、仙腸関節を固定しすぎないで意識的に若干動かすことにより、左足前進の時はできるだけ左腸骨だけを、つまり腰の左側1/3を
前に動かし、右足前進の時はできるだけ右腸骨だけを、つまり腰の右側1/3を前に動かすように意識することによって、仙骨を真っ直ぐに前進させるように歩きます。
そうすると、一歩一歩の“足の上に仙骨を乗せない”で、つまり2軸2トラックで歩くようになり、上体が安定して歩幅が大きく、軽々と歩けます。
今説明していることは、目に見えない身体の内部の感覚なのですが、別な言い方をすると、前回に説明した、仙腸関節でお尻をしめて股関節をしっかり動かして歩くという感じでもあります。
これが、いわゆる腰の入った、しっかりした歩き方ということです。

以上の歩き方をすると、常識と思われている、歩く時には出す足と逆の腕を積極的に振るということが、いかに身体が前へ進むことを妨害しているかが理解できると思います。
歩く時の腕の動きは、あくまでも仙骨が進んでいく動きを邪魔しない範囲で考えることが重要なのです。
これは、ルンバ等でのアームの使い方の基本的な感覚となります。

そういえば、一般にウエイター、ウエイトレスには歩き方が良い人が多いと感じています。
私はよくファミリーレストランに入るのですが、以前に一人の若いウエイトレスさんがとても素晴らしい歩き方をしているので、「バレエでもやっているの?」と聞いてみると、「いいえ、混んでいる時にブラブラ歩いていては仕事にならないので、自然にこう歩くようになったのでは。」と言われました。
しかも、皿などが乗っている大きなトレーを手の上に乗せて速く歩くには、上体がフラフラしないで安定していなければならないのです。
今も 、あるファミレスでお茶を飲みながら、テキパキと素敵に歩いているウエイトレスさんに見とれながらこの原稿を書いています。
そして又、よせばいいのに、彼女に話しかけてしまいました。
「あなたはダンスやってるの?」