腹直筋と腸腰筋

私たちが身体を動かす時には、腰周辺の動かし方が重要なポイントとなります。
今回も、少し難しいかもしれませんが、よく理解して身につけると、身体と踊りのグレードが数段上がってくると思います。

腰の動作ということでは、以前に仙骨と腸骨について考えましたが、これはどちらかというと身体の後面の動きなので、今回は腰の前面の動きについて考えてみます。

腰の部分の前面には恥骨以外に骨がないので、ここでは筋肉である腹直筋(一般には腹筋と言われています)と腸腰筋が登場します。
皆さんに「腹直筋は、どのあたりにある筋肉だと思いますか?」と質問すると、多くの方は、お臍のあたりから胸骨或いは肋骨の下あたりまでと答えます。
テレビなどで腹直筋自慢の人たちが、たくましく割れた腹直筋を見せる時に、皆パンツをはいていて、お臍のあたりから上を見せていますから、皆さんもそこが腹直筋だと思うのは当然だと思います。
しかし、実際には腹直筋とは、下は恥骨から上は胸骨・肋骨までの長い筋肉なのです。
ですから、腹直筋を自慢する方は、パンツをはかないで恥骨の上から腹直筋を全部見せてもらいたいですね・・・(冗談)
なぜこのような話をしたのかというと、 腹直筋の上部と下部では働きが少し違う
からです。
上部は胸骨・肋骨を持ち上げて胸郭を広げる等の働きがあり、下部は恥骨を通して骨盤の動きをコントロールする働きがあるのです。
そこでこれからは、腹直筋をお臍あたりを境にして、上部を上(うえ)腹筋、下部を下(した)腹筋と区別して言うことにします。
一般によく意識されているのは上腹筋ですが、あまり知られていない下腹筋こそとても重要なのです。

次に、これも非常に重要な筋肉である腸腰筋について説明します。
腸腰筋は腸骨筋・大腰筋・小腰筋の3つの筋肉の総称で、これらの3つの筋肉はインナーマッスルであって、腰の中の方にあるので、普通では手で触ることはできません。
腸骨筋は腸骨と大腿骨の最上部を繋いでいる筋肉であり、大腰筋は腰椎あたりから大腿骨の最上部、小腰筋は腰椎あたりから腸骨の下部を繋いでいる筋肉です。
解剖学やWikipediaでは、“脊柱を前屈させる筋肉”などと説明していますが、運動学的にみると、股関節から脚を動かすための最重要な筋肉だと私は考えます。